4年目に入ったコロナ感染症 令和5年に向けて

弘前市医師会会長
沢田内科医院
澤田 美彦

新年あけましておめでとうございます。令和4年も令和2年から続く新型コロナウイルス感染症対策に追われた1年でした。年頭にあたり、昨年の状況を顧みて令和5年に備えたいと思います。

コロナウイルスワクチンは、令和3年の春に医療従事者に対して接種が開始され、弘前市では6月から高齢者の接種を開始しました。ワクチン接種体制を決める段階で、弘前市医師会ではこのワクチンは繰り返し定期的な接種が必要になると判断しました。そこで、体育館などの大きな会場を設けての集団接種ではなく、定期的な接種に対応できるように病院と診療所で個別に接種する体制を作りました。

弘前大学を中心とした市内の大学が共同で行った集団接種や一部の職域、青森県が主導した集団接種が行われましたが、弘前市では周辺の市町村の住民も含め、基本的に医療機関で個別にワクチン接種を行い1年半後の現在も継続しています。もちろん個別の医療機関には大きな負担をかけることになりましたが、どのようなワクチンが供給されようとも、弘前市医師会ではいつでも接種ができる体制が整っています。

弘前市のコロナウイルス診療体制は2類相当という状況では、感染対策がとれる病院が主体となっています。健生病院と弘前総合医療センターは特に多くの入院患者を扱っていますが、鳴海病院、弘前中央病院、弘愛会病院などでも入院治療を行っています。また、弘大は重症者の治療にあたるのが役割ですが、現実には市内の輪番の当番にも入っていますので、ここでもたくさんの患者の診療にあたっています。もちろん、市内の病院の医師も医師会の会員ですが、診療所で診療にあたる会員は入院治療をするのが難しく、発熱外来を通して軽症患者の外来診療にあたっています。そして、できるだけ大きな病院の負担を軽くするように活動してきました。

弘前市医師会そのものの事業にもコロナウイルス感染症が大きな影響を与えました。弘前市医師会は会員のための組織ではありますが、常勤職員約100人、パートなどを含めると全員で約130人の職員が働いています。年間予算約20億円の一般社団法人でひとつの企業体でもあります。いかにコロナ禍とはいえ、経営を考えないわけにはいきません。医師会健診センターは弘前市とその周辺地域の企業健診に大きな役割を果たしています。対がん協会の情報では、全国的にはがん検診受診者数がかなり落ち込んでいます。医師会健診センターも感染が始まった当初は受診者数が減少しましたが、現在では職員の工夫などで大きな落ち込みがなく健診が行われています。

急患診療所は、月平均約千人の急患患者が受診していましたが、コロナ感染が始まってからは受診者数が約3分の1になっています。かつては受診者数がゼロという日はありませんでしたが、ここ2年間は小児科も内科ともに受診者がゼロという日が月に1、2回あります。
それだけ、市民の受診行動が変わってきたということです。このままの状況が続くのか、元に戻るのかはっきりしない状況です。

看護専門学校の学生は、学校の講義室や実習室で勉強するだけでなく、弘前市内外の病院での臨地実習が必須です。その際に学生が実習病院にウイルスを持ち込まないように万全の感染対策を行っています。大きな制限を受けましたが、各病院のご協力により何とか無事に実習を終えることができました。2月12日の看護師国家試験に向けて頑張っています。

健診センター検査課ではシステムを更新して会員医療機関との連携をスムーズに行う予定です。検診課では保健指導体制を改める必要に迫られています。急患診療所は感染対策を行いながら発熱患者の診療を行っていますが、コロナウイルスの検査は行っていません。いつまでこの診療体制で診療を行うのか検討する必要があります。看護専門学校は、准看護学科への入学生を確保するのが緊急の課題です。先日、公立高校の志願倍率が1倍を切ったという新聞報道がありました。数年前の高校卒業生は約1,800人でした。最近は約1,500人です。そして、ここ3年間の弘前市の出生数は1,000人前後です。看護師養成に関しても検討して行かなければなりません。このような状況の中で、弘前市医師会がますます発展するためにはどのようにしたらいいのかを考えながら進んでいくつもりです。

弘前市医師会報 第407号 2023年1・2月号 巻頭言 より