| 弘前市の個別接種は1週間に約1万回の接種を行い11月から12月に接種を完了することを想定していました。しかし、菅首相の1日100万回接種の指示の下、ワクチンの接種回数は多くなりました。弘前市の個別接種で最も多かったのは1週間に1万9000回の接種でした。この結果、県内の市部ではもっとも接種率が高くなり、むしろワクチン供給が間に合わない状態となるほどでした。また職域での接種を呼びかけたこともあり、すべてのワクチン接種回数のうち弘前市周辺地域の人たちが10数%を占めました。これらのことは弘前市医師会の機動力が大きいために実施できたことですので会員の皆さまに感謝いたします。
医療従事者ではもう開始されていますが、新年早々、3回目のワクチン接種が始まります。個別接種でもファイザー製に加えモデルナ製のワクチンも接種することになります。これは私たちが想定した状況であり、ワクチンが供給されれば弘前市医師会ではいつでも接種ができる体制が整っています。
弘前市医師会では令和2年7月15日から青森県の委託事業として弘前PCRセンターを立ち上げました。10月になり弘前市では大規模なクラスターが発生し、弘前保健所からの依頼件数が増加しました。令和3年8月には第5波という大規模な感染拡大があり、会員医療機関だけの検査依頼だけではなく、多数の濃厚接触者の検査など津軽地域の感染対策に大きな役割を果たしました。このように弘前PCRセンターは会員医療機関のためだけではなく、弘前保健所や治療にあたる大きな病院をサポートする役割も果たしているものと考えています。
医師会検査課では青森県から補助をいただきPCR検査装置を導入しました。抗原定性検査は個別の医療機関でも検査ができますが、PCR検査は外注に頼っています。外注の結果は早くて翌日、場合によっては2日かかることもあります。新型コロナウイルスの性状が次第に明らかになってきたこと、医師会職員のワクチン接種が進んだことなどから、医師会検査課でも検査を行うことにしました。県の感染症対策補助事業で導入費用は要りませんでした。その最大のメリットは結果が検査当日に分かることですので会員の皆さまに利用されています。
日本対がん協会では全国的にコロナウイルス感染症のために健診受診者が約3割減少したと発表しました。しかし、弘前市医師会健診センターの受診者の数はほぼ前年と同じでした。昨年5月には受診者が激減したのですが、受診時間をずらすなど職員の工夫で感染対策を十分に行って継続した結果、ほぼ前年と同じ程度の健診を実施することができました。
医師会が運営する急患診療所は、弘前市周辺の地域も含め年間約1万2千人の受診者を受け入れていました。しかし、コロナウイルス感染症が始まって以来受診者は激減しています。幸いなことに、このために重症者が増えたとか二次輪番の負担が大きくなったという事態には至っていません。急患で受診する人は不安が強いために受診する場合が少なくありませんが、コロナ感染症で新しい受診行動が形成されるのかもしれません。
看護専門学校もコロナウイルス感染症で大きな影響を受けました。感染対策のために休校措置を取ったり、実習は市内の病院で行っていますがかなりの時間を学内実習に切り替えて行いました。これからも実習病院の協力を得て、感染対策を十分に行い運営していきたいと思っています。
現在オミクロンと呼ばれる変異型のウイルス感染が広がっています。動物実験のデータでは、このウイルスは肺の気管支ではなく咽頭で増殖する場合が多いようです。これは軽症化につながるのか、早期の増殖を抑える経口の治療薬の効果はどうなのか、ワクチン接種がまだ行われていない小児に対しての感染はどうなのか、まだまだ不明な点がたくさんあります。しかし、現実として感染者数は非常な勢いで増加し、弘前市保健所でのトリアージが追いついていません。これに対して弘前市医師会はトリアージ前の陽性者の経過観察する事業を開始しました。今後もその時点での状況とこれまでに蓄積された情報を分析し切り開いていきたいと思っています。今年もよろしくお願いいたします。
弘前市医師会報 2022年1・2月号 巻頭言 より
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